(20200725更新)
屠殺場に連れて来られた牛や豚たちは、異常がないか、と畜検査されます。そのうち病気が一部分に限定されている場合は、その異常のあった部分だけが捨てられます。これを「一部廃棄」と言います。
病気が全身に広がっていたり、家畜伝染病であったりする場合は枝肉・内臓などすべてが捨てられます。これを「全部廃棄」と言います。
2018年度の食肉検査等情報還元調査*によると、屠殺場に連れてこられた牛と豚のそれぞれ65%、62%に異常があり、その部分だけが捨てられていることがわかります。
つまり、スーパーなどで販売されている「牛肉」の65%、「豚肉」の62%は、病気が切り取られた残りの部分ということになります。
屠殺頭数 | 全部廃棄頭数 | 全部廃棄率(%) | 一部廃棄頭数 | 一部廃棄率(%) | |
牛 | 1,056,661 | 9,186 | 0.87 | 691,105 | 65.41 |
子牛 | 4,742 | 115 | 2.43 | 3,649 | 76.95 |
豚 | 16,411,331 | 19,435 | 0.12 | 10,231,570 | 62.35 |
馬 | 9,763 | 10 | 0.10 | 3,304 | 33.84 |
めん羊 | 5,233 | 8 | 0.15 | 1,599 | 30.56 |
山羊 | 3,677 | 2 | 0.05 | 1,468 | 39.92 |
上の表は、2018年度の食肉検査等情報還元調査*から算出したものですが、一部廃棄の割合が非常に高いものになっています。特に牛と豚では高く、6割以上が体のどこかに異常を持った状態で屠殺場に運ばれてきているということになります。
食肉検査等情報還元調査では廃棄の理由を疾病頭数別に見ることができます。
廃棄理由として最も高いのは「炎症又は炎症産物による汚染」で、次いで「変性又は萎縮」。「黄疸」「水腫」「腫瘍」も目立ちます。多くは一部廃棄ですが、「丹毒症」「敗血症」「尿毒症」などで全部廃棄されている動物もいます。
次の表は食肉検査等情報還元調査をもとに、全と殺数に占める部分廃棄の割合の推移をグラフにしたものです。
牛、豚で廃棄率が一貫して高くなっています。
豚は生後半年、牛は生後2~3年で屠殺場に運ばれています。まだ若い動物であることを考えるとこの廃棄率=病気率は異様に高いものに感じられます。県によっては一部廃棄率が100%近いところもあり、その場合屠殺場に連れてこられる動物のほぼすべてに何かしら疾患があるということになります。
しかし、病気でないほうがおかしいのかもしれません。牛と豚は、馬・めん羊・山羊と比べると数が圧倒的に多く、そして工場型畜産方式で飼育されているからです。
工場型畜産で行われる過密飼育、無麻酔での体の一部の切断、畜舎への閉じ込め、いずれも動物へストレスを与え免疫力を弱める要因となります。ヒト好みの肉質を維持するために繰り返される近親交配も動物にとってはマイナスでしかありません。
牛は霜降り肉を作るために本来食べる草ではなく穀物飼料を与えられ、自分の舌で草を巻き取って食べたいという欲求を満たすことができず、狭い畜舎の中で自分の糞で体を汚しながら生活しています。
豚もまた何もない狭い畜舎中で、その強い探索欲求を満たすことができず、かわりに仲間の尾をかじります。尾かじりは廃棄理由である膿毒症や敗血症の原因になります(膿毒症とは、膿瘍の原因菌が体中に広がった病態です。脊椎にできた膿瘍に起因するものが多く、原因の一つに尾かじりがあります**)。
日本だけが廃棄率が高いというわけではないでしょう。2009年、第 77 回 OIE 総会の開会式でバリー・オニール博士は「推定では、動物疾病により、じつに動物性タンパク質の 20%もが無駄になっている」と述べています***。世界中で、畜産動物は健康的な状況ではないと考えられます。
いうまでもなくこれらの疾病は動物を苦しめます。
この廃棄率は効率を優先させ、動物を顧みない現代の工場型畜産で、動物たちは苦痛を強いられストレスを抱えていることの表れだとも言えます。
問題を解決する方法は目の前にあります。動物性食品の消費を減らすというごく簡単な方法です。この方法を選択をする人は年々増えています。代替肉の市場は拡大し、植物性タンパクのレパートリーは拡がっています。苦しみ、汚染された肉を食べなくても大丈夫なのです。
(写真:日本の養豚場。糞が乾燥し舞い上がり、ハエが飛び回る豚舎の中で、眼が充血して炎症を起こしている)
* 平成29年度食肉検査等情報還元調査
** 平成 29年 7月 No.180 長崎県食肉衛生検査検討委員会情報発信部会
*** 第 77 回 OIE 総会レポート 2009 年 7 月 米国食肉輸出連合会 東京事務所
「屠殺された牛の65%」又は「屠殺された豚の62%」が一部廃棄をされたのであり、売られている牛肉の65%又は豚肉の62%(重量比)が一部廃棄をされた牛・豚の肉な訳ではありません。分かりやすいように言うと、2頭の豚の内片方の肉が75%捨てられた場合、屠殺された豚の50%が一部廃棄をされていますが、捨てられていない豚肉に含まれる「病気の豚から切り取られた肉」は20%です。これは単純なデータの間違いというのみならず、人々に誤った認識・もしくは偏見を植え付けてしまった可能性のある重大な過ちだと思います。訂正宜しくお願いします。
説明されなくても、わかります
知りたかったデータ(食肉検査等情報還元調査)を
ご紹介して頂きまして、ありがとうございます。
何らかの病気を患っている牛から搾乳される事に
非常に問題がありますね。
牛乳、乳製品は、ガンのリスクが高い事も納得です。
ほんとに気持ち悪いですね。肉は美味しくないですし、食べないのが一番の選択肢だなと改めて感じます。
このような情報はとてもためになります!