日本では、動物たちが尻尾を捩じり上げられ蹴られ、スタンガンを何度も押し当てられるなどの暴力が行われていると畜場があります。最期の日に水も飲ませてもらえないと畜場もあります。
アニマルライツセンターは、こういった残酷な行為を廃止しようと取り組んでいます。
署名を集め、厚労省などの関係官庁に提出し、法的な枠組みを求めるとともに、動物への暴力行為が、情報提供やアニマルライツセンターの調査で判明した各と畜場へは、直接改善要望をしています。
▼A/Bと畜場 ▼Cと畜場 ▼Dと畜場 ▼Eと畜場 ▼Fと畜場
2015年12月4日
A/B両と畜場を管轄する食肉衛生検査所へ改善要望書を提出
【改善要望内容】
まず問題点について述べさせていただきます。
Aと畜場における問題点
1. 病気の豚を長時間放置し、意識のあるままワイヤーで四肢をくくり吊り下げる。
2. 牛を移動させる際に行われる「蹴る」「繰り返し尾を捻る」などの虐待行為。Bと畜場における問題点
3. 豚を移動させる際に行われる「蹴る」「スタンガンを過度に使用する」などの虐待行為
4. 豚が自由飲水できる設備がない次に問題ごとに改善方法を提案させていただきます。
1.病気の動物を長時間放置し、意識のあるままワイヤーで四肢をくくり吊り下げる。
現在、病気の動物は、と畜までの間処理施設の踊り場に置かれている状況です。
病気の動物は優先して速やかにと畜してください。長時間の放置はOIE規約に反しています。もしすぐにと畜することが出来ない場合は、屋根があり視界をさえぎり周囲の騒音が耳に入って来ず、温度管理された部屋に一時収容して下さい。
また、病気の動物を移動させる際に、四肢などの体の一部をつかんで吊り下げるという行為はOIE規約に反しています。その場でまずスタニング(気絶処理)をして下さい。2.牛を移動させる際に行われる「蹴る」「繰り返し尾を捻る」などの虐待行為。
これらの行為はOIE規約に反しているだけではなく、動物の愛護及び管理に関する法律にも反する行為です。動物にとっては、急激な明暗の変化、作業員の黄色いブーツなどといううささいなものが、肢を立ち止まらせる原因になります。牛、豚、羊は視野が広く、自身の頭を回すことなく、自分たちの後ろを見ることができます。動物が肢を立ち止まらせる要因には次のようなものがあります。
水たまりの反射
床の段差
騒音
影
通路に落ちている小さな物体(紙コップなどささいなもの
フェンスなどにかけられている衣服
通路の床の変化(質感、色味の変化)
進行先にいる人
進行先が薄暗い
周囲で動くフォークリフトやトラック
斜面動物が動かない場合は強制的に移動させるのではなく、これらの動物の視野に入る要因を取り除いてください。OIE規約には「家畜が反応できず、動かないときには、移動しない原因を精査すべき」とされています。
動物は暗いところから明るい場所へ移動することを好みます。移動先を全体的に明るくしてください。また、同じ明かりでも、まぶしい太陽光や強烈な明かりを動物は嫌います。逆に移動元を強烈な明かりに照らしてみることで移動する可能性もあります。(牛の目は、解像度は低いが明暗には敏感です)
このような影は動物を尻込みさせます。影ができない工夫をして下さい。
*写真引用元 Improving the Movement of Cattle, Pigs, and Sheep during handling on farms, ranches, and slaughter plants(Temple Grandin) 動物の目線に立ってください。写真のような紙コップでも前進できなくなることがあります。
*写真引用元 Low stress handling of cattle will be easier if you locate and remove distractions that cause livestock to balk and refuse to move(Temple Grandin) トラックから係留所へ移動させる際、ランプ(斜面)が存在する場合は藁を敷くことで移動が容易になる場合もあります。
牛をトラックから係留所へ移動させる際は、トラックのシェードを下ろすこと。係留所までの移動の通路はパネルなどを使い、周囲の光景が動物の視界に入らぬようにすること。
写真のように移動先に人を立たせないこと。
*写真引用元 A practical guide to raising animal-handling standards and meat quality in your plant(Eyes on Animals) 移動させる際に大声で話をしない、大きな音をたてない、人はあわただしい動きをしない。
尻尾を引っ張るのは禁止すること。尻尾を引っ張りすぎると皮がむけて骨だけになってしまうこともあります。ヒモを用いる。ヒモを牛のお尻にまわして両側から前方に引っ張る(ヒモの片側を固定された手すりなどに縛るなどして)など苦痛を与えない工夫をすること。
* 移動先の先住の牛の姿をみせる。先住の牛がいることで安心して移動することもあります。3.豚を移動させる際に行われる「蹴る」「スタンガンを過度に使用する」などの虐待行為
スタンガンの日常的な使用を禁止してください。OIE規約は「日常的に電気器具を使うべきではない」としています。
○○食肉センターでは、豚の移動にプラスチックのバットを使っているとのことです。通報のあった動画を見る限り、スタンガンの過度な使用はハンドラーの性格によるものが大きいと思われます。厳しく取り締まってください。スタンガンの過度な使用、豚の受けるストレスは肉質の悪化を招くことが知られています。このような扱いは豚にとってだけではなく生産者にとっても不利益となります。と畜場内にビデオ監視を導入することも有効です。ビデオがあることを知っている時の作業員は、動物への扱いが穏やかになることが研究で明らかになっています。
豚の移動方法については1と同様です(*を除きます)
また豚の場合は写真のように大きいマントを利用することで移動させることも可能です。
*写真引用元 Using Prods and Persuaders Properly to Handle Cattle, Pigs, and Sheep(Temple Grandin)4.ブタが自由飲水できる設備がない
豚の給水設備を設置してください。
OIE規約では「即時にと畜できない場合は、常時飲水できるようにする。」と定められています。豚は一日20リットルほどの飲水を必要としており、自らの体を洗い流し床にたまった少量の水では十分ではありません。以上です。
次に要望を述べさせていただきます
貴所におかれましては、改善に向けて現実に取り組んでいただくことを心よりお願い申しあげます。
また、OIE規約「動物のと殺」の一部を概要翻訳したものを添付いたします。
このOIE規約の概要翻訳と私共の提言を、農場からと畜までの間、動物を扱う方すべてに周知していただくことも合わせて要望します。OIEコード 「動物のと殺規約」の概要
どのような状況下でも、取扱者は、尾を折り曲げ、骨折させたり、目を鷲づかみにしたり、耳を持って引っ張ったりすることで、家畜を移動させる粗暴な行為をすべきではない。
家畜を放り投げ、落としたり、尾、頭、角、四肢、羊毛、毛や羽のような体の一部を持って吊り上げ、引きずることは許可されない。
電気鞭は、日常的には使用せず、緊急時のみ、前方に空いた場所がある場合のみ使用する。家畜が反応できず、動かないときには、繰り返して使わない。移動しない原因を精査すべきとする。
痛みを伴う取扱い(強い鞭打ち、尾捻転、鼻もじり、目・耳・外陰部押さえ)や苦痛を起こす器具の使用(太い棒、鋭利な先を持つ棒、金属製パイプ、柵用の針金、硬い皮製ベルト)は行うべきではない。
容器で搬入された家畜は、できるだけ早くと畜する。
即座にと畜場所に向かえない場合は、常時飲水できるようにする。ニワトリの場合は、12 時間以上飲水できない状況は作らない。
と場への到着後、12 時間以内にと畜されないならば給餌し、さらに適切な間隔で適量の飼料を給与する。
まだ意識のある家畜を肢でもって吊り下げたり、動けなくするために骨折させたり、腱を切ったり、盲目にしたり、は許可しない。
負傷や病気の動物は、人道的かつ遅滞なく即時屠殺が必要とされる。(参考:帝京科学大学生命環境学部家畜福祉学寄附講座サイト)
OIEコード「SLAUGHTER OF ANIMALS」www.oie.int/index.php?id=169&L=0&htmfile=chapitre_aw_slaughter.htm
2015年12月14日
食肉衛生検査所に問い合わせたところ、この提案書をもとに議論を行っており年内に結論を出すとのことであった。
2015年12月23日
アニマルライツセンターで翻訳した「屠殺」のOIE基準の翻訳を。食肉衛生検査所12月23日に追加で発送。
2015年12月28日
再度問い合わせ。年内にアニマルライツセンターからの改善提案書をA・Bと畜場に周知してもらったが、具体的な改善については明示されなかった。
2016年1月5日
「と畜場の施設及び設備に関するガイドライン」*について食肉衛生検査所に問い合わせ、Bと畜場の飲水設備について、電話で回答いただいた。
*1994年に厚生労働省より通達された「と畜場の施設及び設備に関するガイドライン」には「今後、と畜場を新設及び改築等が行われる場合にあっては、と畜場法施行令第1条に定めるもののほか、当該ガイドラインにも適合するよう関係者の指導方お願いする。」として『(2)けい留所』の項に「獣畜の飲用水設備が設定されていること。」との記載がある。
Bと畜場は1968年に開設されたものだが、その後1994年以降に改修工事が行われている。このガイドラインを順守するのなら、その際に飲水用設備が設置されるべきだが、設置されていない。そのため「獣畜の飲用水設備」が設定されていなかったのはなぜかを問い合わせており、それへの回答であった。
食肉衛生検査所からの回答
「改修時に係留所を1/4広げたが、飲水設置を指導しなかった。1/4だけ水を付けても意味がない。全体改修では多額の費用のかかることなので、飲水設備を強制できない。今後合併などで新しい施設ができた時はきちんと指導したい。」
2016年1月7日
Aと畜場で行われている「病気の動物を意識のあるままワイヤーで場内に吊り上げ引きずり込む行為」について、「その場でまずスタニング(気絶処理)をして下さい。」とお願いしていたが、当該食肉衛生検査所から「スタニングは場内で行わなければならない」との回答があった。
屠殺はともかく、スタニングは場外でも出来るのではないかと厚労省乳肉安全係に確認したところ、と畜場法第十三条「何人も、と畜場以外の場所において、食用に供する目的で獣畜をとさつしてはならない。」の”とさつ”に「スタンガン」が含まれるとの見解であった。つまり、法律上は当該食肉衛生検査所の言う通り、その場外でスタニングをして意識を失わせた後でワイヤーで吊るし、場内に引き込むことはできないということである。
2016年2月10日
食肉衛生検査所に改善状況について問い合わせたところ、「直接A・Bと畜場と直接やりとりして下さい」とのこと。
2016年2月12日
Aと畜場に問い合わせたところ、担当者の回答はつぎのとおりであった。
屠殺のOIE動物福祉基準の翻訳版を食肉衛生検査所から受け取ったか確認したところ、受け取っているとのことであった。
Bと畜場へ問い合わせたところ、担当者の回答はつぎのとおりであった。
屠殺のOIE動物福祉基準の翻訳版を食肉衛生検査所から受け取ったか確認したところ、受け取っていないとのことだったので発送した。
2016年3月8日
環境省 動物愛護管理室に、A・Bと畜場での虐待行為を廃止するよう指導を要請。
2016年3月31日
環境省 動物愛護管理室担当者に問い合わせたところ、当該と畜場所轄県庁の公衆衛生獣医班にこちらからの要望を伝えたとのこと。しかし、環境省から直接の指導はできないとのこと。
2016年4月1日
A・Bと畜場を所轄するそれぞれの動物愛護担当行政に、今までの経緯を知らせ、と畜場での虐待行為の防止を要請。
2016年4月4日
Aと畜場を所轄する動物愛護担当より連絡があり、Aと畜場担当者と話をしてくれたとのことであった。Aと畜場担当者によると、次の改善を行ったという。
動物愛護担当は食肉衛生検査所にも問い合わせをしてくれており、検査所は「問題があればその都度指導する」と述べていたという。
2016年5月17日
Bと畜場を所轄する動物愛護担当に電話で確認したところ、食肉衛生検査所と、県の衛生指導課にアニマルライツセンターの意見を伝えたとのこと。
2016年5月初旬
アニマルライツセンターはBと畜場を視察。状況が改善されていないことを確認した。
再びBと畜場に電話し、改善に取り組んでいないのか問い合わせたところ、責任者が交代しており問題を把握していないとのことであった。また、今回の視察では、牛の係留状態にも問題があることがわかった。
牛の係留の問題
- 仮設係留所において前日搬入された牛(乳牛)が短い紐で係留されており、通常行動が阻害されている。
- 自由飲水できる設備がない。(翌日の屠殺まで水が飲めない状況)
牛の係留を、方向転換ができる収容方法に変更し、給水設備を設置することを追加して再度改善提案書を発送した。
2016年5月20日
Bと畜場から電話で回答があり、次の通り取り組むとのことであった。
2016年4月15日
Cと畜場を管轄する食肉衛生検査所へ改善要望書を提出
【改善要望内容】
Cと畜場における虐待行為の内容
豚を移動させる方法として運送業者、と畜場作業員が行っている「電気式追い立て器具の日常的な使用」「体を蹴る」「豚の上に乗り顔を蹴る」などの行為
これらの行為はと畜について定めたOIE基準や、動物の愛護及び管理に関する法律に反する行為です。OIEと畜基準には「家畜が反応できず、動かないときには、移動しない原因を精査すべき」と書かれています。
暴力で移動させる前にこれらの要因を取り除くことを提案します。動物にとっては、急激な明暗の変化、作業員の黄色いブーツなどというささいなものが、肢を立ち止まらせる原因になります。牛、豚、羊は視野が広く、自身の頭を回すことなく、自分たちの後ろを見ることができます。
動物が肢を立ち止まらせる要因には次のようなものがあります。1. 水たまりの反射
2. 床の段差
3. 騒音
4. 影。右写真のような影は動物を尻込みさせます。影ができない工夫をして下さい。
*写真引用元 Improving the Movement of Cattle, Pigs, and Sheep during handling on farms, ranches, and slaughter plants(Temple Grandin)5. 通路に落ちている小さな物体。動物の目線に立ってください。右写真のような紙コップでも前進できなくなることがあります。
*写真引用元 Low stress handling of cattle will be easier if you locate and remove distractions that cause livestock to balk and refuse to move(Temple Grandin)6. フェンスなどにかけられている衣服
7. 通路の床の変化(質感、色味の変化)
8. 進行先にいる人
*写真引用元 A practical guide to raising animal-handling standards and meat quality in your plant(Eyes on Animals)9. 進行先が薄暗い
10. 周囲で動くフォークリフトやトラック
11. 斜面その他の改善方法
1. 動物は暗いところから明るい場所へ移動することを好みます。移動先を全体的に明るくしてください。また、同じ明かりでも、まぶしい太陽光や強烈な明かりを動物は嫌います。逆に移動元を強烈な明かりに照らしてみることで移動する可能性もあります。
2. トラックから係留所へ移動させる際、ランプ(斜面)が存在する場合は藁を敷くことで移動が容易になる場合もあります。
3. トラックから係留所へ移動させる際は、トラックのシェードを下ろすこと。係留所までの移動の通路はパネルなどを使い、周囲の光景が動物の視界に入らぬようにすること。
4. 移動させる際に大声で話をしない、大きな音をたてない、人はあわただしい動きをしないこと。
5. と畜場内にビデオ監視を導入することも有効です。ビデオがあることを知っている時の作業員は、動物への扱いが穏やかになることが研究で明らかになっています。
6. 写真のように大きいマントを利用することで豚を移動させることも可能です。
*写真引用元 Using Prods and Persuaders Properly to Handle Cattle, Pigs, and Sheep(Temple Grandin)要望
1. 運送業者、と畜場作業員が行っている虐待行為を厳しく取り締まってください
2. スタンガンの日常的な使用を禁止してください。OIEと畜基準は「日常的に電気器具を使うべきではない」としています。スタンガンの過度な使用、豚の受けるストレスは肉質の悪化を招くことが知られています。このような扱いは豚にとってだけではなく生産者にとっても不利益となります。
3. 輸送トラックと係留所の「段差」を解消してください。市民から通報のあった動画を見たところ、「段差」を無くせば暴力行為に及ばずともスムーズに豚を移動できるはずと考えられます。
スロープを設ける、盛り土をするなどの対応をお願いします。
4. 運送業者、と畜場作業員など、と畜場で動物に関わる者全員に添付のOIEと畜基準を周知してください。海外では中国をはじめ多くの国がこの基準を導入しています。この基準にはやってはならない行為だけではなく、スムーズな動物の移動方法についても書かれており、動物福祉の向上だけでなく、作業効率の改善にもつながると考えられます。以上です。
2016年4月28日
文書にて下記の改善をするとの回答があった。
2020-2021年
再度この屠殺場を視察したところ、豚たちは以前と変わらない暴力的な扱いを受けていることが分かりました。そのため再度要望を行いました。詳細はコチラをご覧ください。
2017年1月10日
Dと畜場を管轄する食肉衛生検査所へ改善要望書を提出
【改善要望内容】
Dと畜場における問題行為
- 豚を移動させる方法として運送業者、と畜場作業員が行っている「電気式追い立て器具の日常的な使用」「耳や尻尾をつかんで引っ張る」「体を蹴る」「豚の上に乗り顔を蹴る」「脅かすような大きな声を立てる」などの行為(動画添付)
これらの行為はと畜場における動物福祉について定めたOIE(世界動物保健機関)の『と殺における動物福祉基準』(添付)や、動物の愛護及び管理に関する法律に反する行為です。
OIEの『と殺における動物福祉基準』には「家畜が反応できず、動かないときには、移動しない原因を精査すべき」と記載されています。
また、動物の愛護及び管理に関する法律において、畜産動物への虐待行為は罰則対象となります。暴力的行為で移動させる前に、移動しない要因を取り除くことを提案します。
提案
動物にとっては、急激な明暗の変化、作業員の黄色いブーツなどというささいなものが、肢を立ち止まらせる原因になります。牛、豚、羊は視野が広く、自身の頭を回すことなく、自分たちの後ろを見ることができます。
動物が肢を立ち止まらせる要因には次のようなものがあります。これらを排除してみて下さい。1. 水たまりの反射
2. 床の段差
3. 騒音
4. 影。写真のような影は動物を尻込みさせます。影ができない工夫をして下さい。
*写真引用元 Improving the Movement of Cattle, Pigs, and Sheep during handling on farms, ranches, and slaughter plants(Temple Grandin)5. 通路に落ちている小さな物体。動物の目線に立ってください。写真のような紙コップでも前進できなくなることがあります。
*写真引用元 Low stress handling of cattle will be easier if you locate and remove distractions that cause livestock to balk and refuse to move(Temple Grandin)6. フェンスなどにかけられている衣服
7. 通路の床の変化(質感、色味の変化)
8. 進行先にいる人(写真)
*写真引用元 A practical guide to raising animal-handling standards and meat quality in your plant(Eyes on Animals)9. 進行先が薄暗い
10. 周囲で動くフォークリフトやトラック
11. 斜面輸送トラックから係留所への追い込みにおける問題行為は、輸送トラックと係留所の間に段差があることに大きな要因があると考えられます。段差があることで豚が怖がり先に進もうとしないことが作業者のいら立ち、暴力行為を引き起こし、ひいては作業者の負担、作業効率の低下につながっている可能性があります。
その他の改善提案
1. 動物は暗いところから明るい場所へ移動することを好みます。移動先を全体的に明るくしてください。また、同じ明かりでも、まぶしい太陽光や強烈な明かりを動物は嫌います。逆に移動元を強烈な明かりに照らしてみることで移動する可能性もあります。
2. トラックから係留所へ移動させる際、ランプ(斜面)が存在する場合は藁を敷くことで移動が容易になる場合もあります。
3. トラックから係留所へ移動させる際は、トラックのシェードを下ろすこと。係留所までの移動の通路はパネルなどを使い、周囲の光景が動物の視界に入らぬようにすること。
4. 移動させる際に大声で叫ばない、大きな音をたてない、人はあわただしい動きをしないこと。
5. と畜場内にビデオ監視を導入することも有効です。ビデオがあることを知っている時の作業員は、動物への扱いが穏やかになることが研究で明らかになっています。
6. 写真のように大きいマントを利用することで豚を移動させることも可能です。
*写真引用元 Using Prods and Persuaders Properly to Handle Cattle, Pigs, and Sheep(Temple Grandin)繰り返し大きな声を上げて豚を移動させようとする作業者がいましたが、豚を脅かすことにつながっている可能性があります。過度の騒音や叫び声は豚のストレスとなります。
要望
1. 電気スタンガンの日常的な使用を禁止してください。OIEの『と殺における動物福祉基準』は「日常的に電気器具を使うべきではない」としています。電気スタンガンの過度使用といったストレスを与える行為は、肉質の悪化を招くことが知られています。このような扱いは豚にとってだけではなく生産者にとっても不利益となる可能性があります。
2. 輸送トラックと係留所の「段差」を解消してください。「段差」を無くせば暴力的行為は減少できると考えられます。
3. 運送業者、と畜場作業者など、と畜場で動物に関わる者全員に添付のOIEの『と殺における動物福祉基準』を周知してください。海外では中国をはじめ多くの国がこの基準を導入しています。この基準には、やってはならない行為だけではなく、スムーズな動物の移動方法についても書かれており、動物福祉の向上だけでなく、作業効率の改善にもつながると考えられます。
4. 飲水設備を設置してください。
OIEの『と殺における動物福祉基準』では「即時にと畜できない場合は、常時飲水できるようにする。」と定められています。豚は多いときは一日20リットルほどの飲水を必要としていると言われており、シャワーだけでは十分ではないと考えられます。
1994年に厚生労働省より通達された「と畜場の施設及び設備に関するガイドライン」には「今後、と畜場を新設及び改築等が行われる場合にあっては、と畜場法施行令第1条に定めるもののほか、当該ガイドラインにも適合するよう関係者の指導方お願いする。」として『(2)けい留所』の項に下記の記載があります。
「獣畜の飲用水設備が設定されていること。」
現時点で設置が不可能であれば、改築時には設置していただけるようご検討ください。
2017年2月17日
文書で下記の回答がありました
改善対策の内容について
(1) 豚が常時飲水できるように,係留所内へ給水器(ニュートントップスプリング)を順次設置していく。
(2) 電気ショッカー等の使用を極力控え,ストレスの少ないパネル等を使用して豚を誘導するよう搬入業者への啓蒙を図る。
(3)係留所の段差解消については,今後検討を行っていく。
(4) と畜場関係者(経営者,従業員,搬入業者等)へ動物福祉について,以下の方法により周知を行う。
ア と畜場において,朝礼等の機会を利用して従業員に周知する。(2 月13 日実施済)
イ 従業員,搬入業者等へ貴センターから送付頂いた「OIE と殺における動物福祉基準」「改善提案」を配布し,周知する。(2 月8,13,15 日配布,周知済)
ウ 昨年,管内のと畜場経営者等会議において,と畜場の動物福祉関係について講習会を実施した。今後も経営者,搬入業者,従業員に対して,衛生講習会等により動物福祉に関する啓蒙を図っていく。
エ 係留所に看板を立て,獣畜に対する不適切な扱いへの注意喚起を行う。(現在,掲示内容を検討中)看板文言
牛や豚の生体搬入並びに、と畜業務に従事する皆様へ
先のような行為は極力控えるよう願います。
〇電気ショッカー等使用による追い込み
〇耳や尻尾をつかんで引っ張る追い込み
〇体を蹴ったり,ぶったりする追い込み
〇大きな音,大きな声をたてて追い込む
牛や豚を優しく取り扱いましょう。
2020年
再度この屠殺場を視察したところ、豚たちは以前と変わらない暴力的な扱いを受けていることが分かりました。そのため再度要望を行いました。詳細はコチラをご覧ください。
<参考>
パネルとプラスチックパドルを利用した豚の移動のさせ方 Smart Pig Handling – Part 2 of 2 – Principles of Pig Handling
フラッパーを利用した牛と羊の移動のさせ方 Sheep and cattle handling guidelines